指板トレーニングは、ギターのどのフレットがどの音名かを、考えずに分かるレベルまで体に覚え込ませる練習です。スケールやコードを「形」だけで覚えていても応用が利きませんが、指板上の音名が瞬時に出てくると、アドリブ・移調・耳コピが一気に楽になります。
このページは設定の選び方をまとめたマニュアルです。各設定は音楽教育で確立された学習法にもとづいて設計しています。判断が要る設定について、おすすめの選び方・何のための設定か・鍛えられる力とその根拠を簡潔に示します。設定画面の「?」から来た方は、目的の項目までスクロールしてください。アプリ内では、同じ「?」のヘルプにある「この画面の使い方を見る」から、画面の操作チュートリアルも再生できます。
本ページは、練習ホームから単体で開くトレーニングの設定画面を前提に解説しています。練習プランの項目から設定を開いた場合は、その項目に保存される設定だけが表示されます。
トレーニングモード(出題の向き)
まずは「音名 → 位置」から。 安定したら「位置 → 音名」で逆向きを固め、1 音の広がりを身につけたくなったら「弦移動」へ。耳から探す 音→指板・音程→指板・メロディエコー は、目で見て答える 3 モードが安定してからが効果的です。
「何を見せて、何を答えさせるか」という出題の向きを決める設定です。6 つのモードがあり、同じ指板上の音名を扱っても、向きが違えば別の力が付きます。目で見て答える 3 つに加えて、聴こえた音を指板の上に置いていく 3 つの耳のモードがあります。
目で見て答える 3 つの向きは、楽器奏者に求められる「音名と指板上の位置を双方向に結びつける」力を別々の角度から鍛えます。同じ素材を呼び出す向きを変えて練習することで、形だけの暗記ではなく実際の演奏で使える知識になります。耳から探す 3 つのモードは、その音名の記憶に「聴こえた響き」を重ね、聴音と楽器操作を橋渡しします。いずれも器楽・聴音教育で確立された指板習熟の考え方に沿った設計です。
参考: Karpinski (2000) [1]
楽器
自分が弾いている楽器を選んでください。 ギターなら ギター(6弦)、ベースなら弦数に合わせて ベース(4弦)/ ベース(5弦) を。選ぶと指板そのものが切り替わります。
出題に使う指板をギターとベースのどちらにするかを決める設定です。弦の本数と各弦の音名の並びが選んだ楽器のものに切り替わり、すべてのモードに反映されます。対象弦とチューニングを選べるのはギター選択時のみです。出題音源にギター/ベースの音色を選んでいた場合は、楽器の切り替えに合わせて音源も自動で追従します(ピアノ・サイン波はそのまま維持されます)。
出題する音(出題範囲の音名)
まずは「幹音のみ」から。 7 音を指板のどこでも 80% 以上で言えるようになってから「シャープを含む」(または「全ての音」)へ。フラット表記が必要な人だけ「フラットを含む」を。
どの音名を出題対象にするかを決める設定です。幹音(=シャープもフラットも付かない自然音 C D E F G A B)だけにするか、シャープ・フラットを含めるかを選びます。範囲を絞るほど覚える対象は少なく、広げるほど指板の全 12 音をカバーします。
一度に覚える音名が少ないほど、処理する情報量が減り、各音の位置を確実に身につけられます。狭い範囲を固めてから広げるほうが、いきなり 12 音すべてに挑むより速く定着します。新しい技能の初期は処理の負荷を抑えるほど学習が進む、という認知負荷の考え方にもとづく段階設計です。
参考: Sweller (1988) [2]
フレット範囲
まず「0-5」で土台を作り、安定したら「0-12(標準)」へ。 12 フレット以降は同じ並びの繰り返しなので、まずはここを目標にすると効率的です。
指板上のどの区間から出題するかを決める設定で、出題の難易度を実質的に左右する効きの大きい項目です。狭く絞れば覚える場所が減り、広げれば指板全体を扱います。なお 弦移動 モードでは 0-12 に固定され、メロディエコーでは練習エリアが優先されます(フレット範囲は練習エリアを「指板全体」にしたときだけ有効)。練習エリア(指板全体 / ロー(0〜4) / ミドル(5〜9) / ハイ(9〜13))は、メロディエコー専用の出題ゾーン設定です。
出題範囲を絞ると、一度に覚える位置の数が減り、その区間を確実に身につけられます。狭い区間を固めてから広げるほうが、最初から指板全域に挑むより速く定着します。新しい技能の初期は処理の負荷を抑えるほど学習が進む、という認知負荷の考え方にもとづく段階設計です。
参考: Sweller (1988) [2]
対象弦(フォーカス設定)
基本は「全ての弦」のままで OK。 特定の弦だけ正答率が低いと気づいたら、その弦に一時的に絞って集中し、また全弦に戻します。
6 本のうちどの弦から出題するかを絞る設定です(基本設定内・全モード共通)。ギター選択時のみの設定で、ベース選択時は常に全弦(4〜5 本)から出題されます。「全ての弦」のほか、高音弦・低音弦の 3 本ずつ、あるいは 1 弦ずつに絞り込めます。音名 → 位置 モードのフォーカス設定にある 苦手な音のみ を使うと、正答率 70% 未満の音だけが自動的に出題されます(成績データがたまってから有効)。
対象弦を絞れるのは、一度に扱う情報量を減らして苦手な部分を確実に埋めるためです。全弦をまとめて練習すると弱い 1 弦は数の中に埋もれがちですが、その弦だけに絞ると処理の負荷が下がり、集中して定着させられます。初期や苦手克服では負荷を抑えるほど学習が進む、という認知負荷の考え方にもとづきます。
参考: Sweller (1988) [2]
回答モード
まずは「1箇所タップ」から。 各音の位置がだいたい頭に入ってきたら「全箇所タップ」に切り替え、指板全体での散らばりを完成させます。
音名を指板で答えるとき(音名 → 位置 モード)に「どこまでタップすれば正解か」を決める設定です。1 つの音名は指板上の複数の場所に存在するため、全部を答えさせるか 1 箇所で良しとするかで難易度が変わります。
2 つの設定は、楽器奏者に必要な「1 つの音名が指板全体のどこにあるか」という知識を段階的に仕上げるためにあります。最初は 1 箇所で即答する反応を作り、慣れたら全箇所を答えさせて指板全域の位置関係を網羅します。これは器楽・聴音教育で確立された指板習熟の進め方に沿った設計です。
参考: Karpinski (2000) [1]
ヒント(アシスト設定)
まったくの初学者は「オクターブ表示」で位置関係をつかみ、慣れたら「ヒントなし」へ。 最終目標は ヒントなし で安定して答えられることです。
回答中にどれだけ補助情報を表示するかを決める設定です。補助が多いほど答えやすくなりますが、その分「自力で思い出す」負荷が減るため、慣れたら減らしていくのが基本です。
ヒントは、初学者がまだ覚えきっていない段階で処理の負荷を下げるための足場(スキャフォールド)です。オクターブ表示などの補助が手がかりを与えて負荷を抑え、位置関係をつかみやすくします。慣れて余裕が出たら補助を外し、自力で答える本来の負荷に戻すのが効果的です。足場で負荷を抑えると初期の学習が進む、という認知負荷の考え方にもとづきます。
参考: Sweller (1988) [2]
チューニング
基本は「標準(EADGBE)」のままで OK。 変則チューニングは、実際にそのチューニングで弾く必要が出てきてから取り組めば十分です。
各弦の開放弦の音を何にするかを決める設定です。チューニングが変わると同じフレット位置でも鳴る音名が変わるため、指板上の音名マップそのものが変わります。標準(EADGBE)のほか、6 弦だけ 1 音下げたドロップ D(DADGBE)や、開放弦だけで和音が鳴るオープン G・オープン D・DADGAD などに対応します。普段と違うチューニングで弾く曲があるなら、それに合わせて指板を覚え直すために使います。チューニングを選べるのはギター選択時のみで、ベースは標準チューニング(4 弦 EADG / 5 弦 BEADG)に固定されます。
利き手
自分が弾いているギターと同じ向きを選んでください。 右利き用ギターなら 右利き、左利き用ギターなら 左利き。一度選べば十分です。
画面に表示する指板の向きを決める設定です。難易度や練習内容を変えるものではなく、表示を自分の楽器に合わせるためのものです。手元のギターと画面の向きが一致していないと、位置を答えるとき頭の中で左右を反転させる余計な手間がかかります。
出題音源
迷ったら、自分の楽器と同じ音色(ギター/ベース)がおすすめ。 特に耳のモードでは、実際に聴き取りたい楽器の音色で練習できます。音の高さだけに集中したいときはサイン波を。
出題音とタップ時の音の音色を決める設定です。変わるのは音色のみで、指板そのもの(ギター/ベース)の切り替えは上の 楽器 の項で行います。選択肢は楽器に連動します。ギターの指板ではベース音源が、ベースの指板ではギター音源が表示されず、ピアノ・サイン波はどちらでも選べます。
- Karpinski, G. S. (2000). Aural Skills Acquisition: The Development of Listening, Reading, and Performing Skills in College-Level Musicians. Oxford University Press.
- Sweller, J. (1988). Cognitive load during problem solving: Effects on learning. Cognitive Science, 12(2), 257–285.